今年の映画ベストテン2018
今年劇場で観た映画は105本。
これに加えてNetflixの新作オリジナル映画も12本観ているので、計117本から選んだ今年のベスト10。
旧作とか未公開作もそれなりに観たりできたので、とても良い1年だったなーって感じ。
10位 孤狼の血
『孤狼の血』好きなシーンがたくさんありすぎて、ありすぎるんですけど、本筋と関係ないところで言うと「気合い入れてっから待ってろ!」ですね。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) May 19, 2018
9位 悪女/AKUJO
『悪女/AKUJO』観た。純粋にすげーアガった。悲劇ドラマパートとアクションパートの塩梅が良い。オープニングのアクションがなんであんなに狂ってたのかが後半に分かる仕掛けも嬉しい。ドラマパートはひたすら悲劇なので評価別れるか。あえて予告編観ないで行くのがいいと思う。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) February 16, 2018
8位 カメラを止めるな!
『カメラを止めるな!』この映画は、結局皆の日常の話であって、向かい合った結果があの37分なのである。くらいしか言えないな。本当に楽しい96分。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) July 4, 2018
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』観た。バカがバカを呼んで、ひたすら穴だらけの悪事から転落していく様をバカバカしく描いている。インタビュー形式なので互いの主張が違うのをそのまま反映しているのは新鮮。才能が環境に負けて落ちていくのはいつだって哀しい。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) May 8, 2018
6位 ウィンド・リバー
『ウインド・リバー』観た。ヒリヒリ感が最後まで持続する。生き残ってこの土地にいる者と、諦めてこの土地にいる者の残酷な交差。あれを唐突に挟み込む構成にやられた。。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) August 14, 2018
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』観た。貧困層の話ですが、主要人物はひたすら口が悪い。だけど、下品な作品になってないのは上品な画作りと圧倒的ウィレム・デフォー。カラッとしている雰囲気もいい。魔法がかかるラストまで目が離せない。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) May 29, 2018
4位 レディ・バード
『レディ・バード』理想と現実、都会と地方、親と子、パリピと文化系、全ての要素を内包した高3の1年とちょっとオマケ。そんな物語を締めくくる一言に痺れる。いつでも気付くのは全部終わった後。めちゃくちゃ笑って、ちょびっと泣いた。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) June 10, 2018
3位 ROMA/ローマ
『ROMA/ローマ』終盤の波のシーン。あそこまでの2時間くらいが全てあそこに集約されている。ずっと流れに委ねていた人が、初めて向かってくる波に立ち向かうんですよ。要はそういう映画なんですよこれは。何のために立ち向かうのか、それは実際に観るのが良い。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) December 23, 2018
2位 ここは退屈迎えに来て
『ここは退屈迎えに来て』ある特定の条件下にいる人だけを殺しに来る映画なので、人によっては全く響かないだろうし、それに途中で気付き始めて逆に背筋が凍った。つーかよく企画通ったなっていう。。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) October 22, 2018
1位 寝ても覚めても
『寝ても覚めても』あのラストカットからtofubeatsのRIVERが流れ始める流れ、鳥肌しかなかった。終わっても席から立ち上がれなかったもんな。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) September 5, 2018
『寝ても覚めても』強さも弱さも優しさも強引さも正しさも過ちも偶然も必然も過去も未来もすべて繰り返していって、辿り着くのが川であって、どんな川なのかと言えばラストの2人の台詞通り。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) September 5, 2018
年間100本以上観てると「これもない」「あれもない」状態になるのは仕方がない状態なのであくまで参考程度にしていただければ。
今年はドラマもいろいろ観た1年で、民放の連ドラだと『アンナチュラル』『獣になれない私たち』の野木亜紀子脚本物件にはまりまくった印象が強い。
あと海外系だと何と言っても『アトランタ』!それと『ブラック・ミラー』も全シーズン一気見してどれも見逃せない出来だったのも記憶に新しい。
あと、『LOVE/ラブ』のファイナルシーズンも。これは予告編も最高なんだよなー。
ま、こんな感じで来年も面白いものをあれこれいっぱい観られたらな。
あと来年はブログというか、長めの文章をもっと書きたい。Twitterに慣れてしまって140字にまとめることばっかり巧くなっている気がするし。
『寝ても覚めても』という映画体験
だいぶ前に観た映画だが、寝ても覚めてもがとても良かった。
エンドロールを見終えて席から立ち上がれなかった映画は久々だった。
詳しいあらすじはもういろんなところで延々と語られているので割愛するが、姿形の似た2人の男を過去と現在と未来の間で揺れ動く女性を描いているとでも言えばいいだろうか。
うまく言葉にするのがとても難しい話だけど、要は選択と行動の話で、すべての流れていく人間関係への鎮魂歌のようなものだと解釈している。
突然だが、よく映画の感想として「感情移入できないので好きじゃない」というワードが出てくることがあるが、個人的には感情移入ってそんなに大事か?と思うことがあって。
映画の登場人物が観ている客の意思通りに動いてくれる訳なんてないじゃんと思っている人間なので、むしろ「なぜそう考えたのか?」を深掘りしていくことが映画を観る醍醐味なんじゃないかなと思っている。
もちろん、自分でもこうしたんだろうな、となることも多いけれども。自分の想いとスクリーンの中の行動が一致した時の高揚感は説明するまでもないが、相反した時の予想外の転がり方に心を動かされてしまうことも同じくらいある。
話が逸れてしまったが、この「寝ても覚めても」を観ていて考えたのは理屈とは全く別のところで動いてしまう人間の悲しい性のようなものと、それすらすべて含めて人生なんだという力強さのようなもの。
多くの人が指摘しているように、終盤に向かっての朝子の行動に嫌悪感を示す人も多いだろう。5年という月日を経て、なぜ過去のキラキラした思い出の中の人に逃避してしまうのか。そう考えてしまうのも無理はない。
だけど、実は気持ちは分からなくないところもある。理屈だけであれば、あそこでしっかり亮平を選んで、正しい結婚をして正しい生き方をして正しい最期を迎えるのが正しいんだろう。だけど、この世界はそんなに単純じゃない。
正しくないことを自ら進んで選んでしまうことはないか。少なくとも自分にはある。だから、どうしても、この映画を愛しく思ってしまうのである。
我々にだって1つや2つ、「あのときあそこでああすべきだったな」ってことはあるだろう。この映画はそれをものすごく極端に描いているように感じる。
その選択で失う友人もいる。愛も失う。何かを背負わないといけないのかもしれない。でも、それでも、まだ諦めきれないようなものもある。
それが最後の長回しのシーンが表してくれている。間違いを許容するわけでも、突き放す訳でもないあの時間。
この映画は、今まで起きたことを川に例えるラストへ繋がる。
「きったねえ川」「だけど、きれい」このやり取りで話は幕を閉じる。
tofubeatsの素晴らしい曲に乗せて観客は自分の川に想いを馳せて帰途につくことになる。
本当に素晴らしい映画体験だった。
今年の映画ベストテン2017
今年映画館で観た新作映画は95本。
個人的に思うところもあり、旧作やNetflix等のドラマを観るのに割く時間を増やしたので本数という意味ではここ数年では一番少ない結果となった。
Netflixオリジナル配信の新作映画も今年10本観ているので、そちらも考慮したうえでのベストテン。
今年は、例年通りの予告編に加えてTwitterでの鑑賞直後の感想と併せてまとめることにした。
10位 gifted/ギフテッド
『gifted/ギフテッド』観た。一見いくらでもシリアスに、ドロドロに出来る裁判劇をここまで温かく、優しく描ききるのはやはりマーク・ウェブ監督の力量。大小あれど才能と意思の狭間に揺れる人々を見ながらいろんなことを考えることができる。やっぱりマーク・ウェブにはこういう作品を期待したい。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年12月1日
9位 ローガン・ラッキー
『ローガン・ラッキー』観た。平日のレイトショーに似合う。強盗ものだけど爽やかな印象が残る映画だった。残り5分の駆け足が謎の余韻を残す。チャニング・テイタムとアダム・ドライバーがどう見ても兄弟にしか見えない感じもいいけど、やっぱ終始ぶっ飛んでるダニエル・クレイグでしょう!
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年12月7日
8位 あゝ、荒野 後篇
「あゝ、荒野 後篇」観た。凄かった。ラストの一戦は、なんだか、自分の内面をずっと殴られている気がした。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年10月22日
「あゝ、荒野 後篇」正しい/正しくないの判断基準だと多分これは正しくない。全てがひとつに繋がるわけでもないし、交差するものもあればしないものもある。結局気持ちが全てを上回っていく一戦をあれだけ眩しく見せるための157+147分だったのでは。ラストカットの菅田将暉最高だったよ。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年10月22日
7位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス」観た。最高だよ。あんなに笑って、最後泣くとは思わなかったよ。ああ、最高だ。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年5月12日
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス」そもそもOPタイトルの出方が5億点だし、スタローンの使い方は卑怯だし、偏りすぎないバランス感覚も素敵だし、これはもうブチ上がるしかないのでは。すげぇよジェームズ・ガン。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年5月12日
6位 HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF THE SKY
「HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY」観た。最高すぎて言葉が出ない。日本のアクション映画史上最強の一作だと思う。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年8月22日
「HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY」私は完全に村山激推しなんですが、今作の村山は最後の最後まで有能すぎて、やっぱり村山最強じゃんってなってる。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年8月22日
「20センチュリー・ウーマン」観た。ただただ、素敵でした。好きです。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年6月12日
「20センチュリー・ウーマン」14歳とか15歳とか16歳とかは『それとこれは違う』に心を砕かれまくるものだと思ってるんですが、それをど真ん中で見せてくれるエル・ファニングに頭抱えるしかないっていう。。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年6月12日
4位 バンコクナイツ
「バンコクナイツ」観た。どうしても何か欲しがってしまう我々へのレクイエムのような、不思議な感覚の3時間だった。都会⇄田舎⇄都会の映し方が素晴らしく、風景だけで生き方というものを考えさせてくれる。そして田我流の登場シーン、アガった。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年3月6日
3位 ムーンライト
「ムーンライト」やっと観た。111分なのに体感時間30分くらいであっという間。初恋映画だよな。どんなに見た目が変わろうが、生き方が変わろうが、変えられないものがあるんだって、それだけでもう目頭熱くなってしまったよ。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年5月30日
「ムーンライト」マハーシャラ・アリ演じるフアンの存在感が中盤以降も実在し続けてるのも、体感時間を短く感じさせてくれるスパイスなのかも。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年5月30日
2位 君の膵臓をたべたい
「君の膵臓をたべたい」観た。これは凄いよ。やり切ってるよ。これは青春ゾンビ案件だよ。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年7月30日
「君の膵臓をたべたい」この映画がここまで感動的になったポイントは、ベタを恐れずやり切っていることと、”安易に”広瀬すずをキャスティングしなかったことと、”安易に”山崎賢人をキャスティングしなかったことと、浜辺美波と北村匠海と大友花恋と矢本悠馬が最高だったことだ。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年7月30日
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」観た。白黒つけられないで続く難しさを描いておいてからの”乗り越えられない”には言葉が出ない。白も黒もそれ以外の何かにしても、背負うべきものはついて回るのかもしれない。
— びぃーてぃー (@vtlb0305) 2017年5月27日
個人的な次点としては邦画だと『愚行録』、洋画だと『ビフォア・アイ・フォール』*1を挙げたい。
それにしても、愚行録は終盤のあのくだり*2さえなければベスト級だよな。。
あと、映画じゃないが今年はNetflixのドラマが熱かった。
「ストレンジャー・シングス」
))「マスター・オブ・ゼロ」「ハノーバー高校落書き事件簿」「ラブ/LOVE」がお気に入りだった。
あともはや義務として観ている「フラーハウス」も。
来年も面白い作品といっぱい出会えますように。
Base Ball Bear「光源」を聴いていろいろ考える
Base Ball Bearの新譜が出た。
ひとつ、今までとは大きく違う部分がある。
ギターの湯浅将平が脱退して初めてのアルバムということだ。"夕方ジェネレーション"以来、すべての曲のリードギターを引いてきた彼の不在。
それに伴い、基本的にはギター2本、ベース、ドラムで成り立っていたベボベは方向の転換を余儀無くされ、今作ではシンセやブラスを部分的に導入している。
前作「C2」について、2週目に入ったという書き方をしたが、今作「光源」を聴いて、その思いは一層増した。1週目の2ndに当たる「十七歳」と「光源」は近い部分があると思うからだ。
「十七歳」は小出祐介がのちに師匠と呼び慕うことになる玉井健二氏と出会い、先輩プロデューサーから楽曲の構成作りの基礎を学んだ上で作られた、青春にフォーカスを当てた作品だ。
そして「光源」は湯浅というギタリストの不在に遭遇し、それを逆手にとって今までとは違う方法論で作られた「時間と青春」をテーマにした作品だ。
出会いと別れの違いこそあれ、今までベボベとは違う方法論で作られたのは共通しているように思う。*1
青春の中にいたあの頃とその先にいる今の対比という意味でも、なんとなく近いものがあるのではないかと思っている。
では、肝心の今作「光源」の内容はどうか。
描かれているのは、まぐれもなく青春の話である。
もっと突っ込んで言えば、時間が経とうが変わらない青春の話だ。
この作品での青春の描き方はいつも今から前、もしくは先のことに言及して進んでいる。
最初の2曲は"あの日"に言及しているし、「Low way」〜「(LIKE A)TRANSFER GIRL」〜「寛解」の流れは3曲すべて"明日"という歌詞を含んでいる。逆に、「SHINE」以降は過去を振りかえる描写が増えていく。
でも、すべて曲において根源、いや光源にあるのはやはり青春なんだと思われる。
そして、前作の際も書いたが、ベボベのアルバムは毎回終盤の作り込みが半端ない。今作でもそれは例に漏れずである。
「SHINE」〜「リアリティーズ」〜「Darling」の流れは何度聴いても唸ってしまう。
「SHINE」は今までのベボベが描いてきた青春に映画版の「溺れるナイフ」 のようなギリギリの危うさを足したような曲だ。*2
"生きている"と"生きていた"の対比に唸るしかなかった。いくら馴染めなくても、そして時間が経って馴染んでしまっても、忘れられないものはあって、それが我々の起点なんだと歌っているような気がしてならない。
「リアリティーズ」は今自分がいるところから出ていくことを促す。あの頃の青春にもその先の現実にも居場所がないと思ってしまう我々に出て行けと謳う。果たしてどの視点からなのだろうか。未来の自分なのだろうか。
そして「Darling」へと続く。いろんなオマージュが入り混じる中で、幾億秒先から"君"への想いを綴る。
結局のところ、1曲目の「すべては君のせいで」に戻る。なんて綺麗なんだと思ってしまった。
良いアルバムだと思う。
青春か、青春じゃなくてもそれぞれの光源のようなものを自覚している人には確実に刺さる作品だろう。
「二十九歳」や「C2」のような問題提起が無いからこそ、"じゃあ、自分の光源は?"と考え込んでしまう。
でも、我々が今考えていることも含め、すべて鳴り響いていって、今日も決められたパラレルワールドに進んでいってるんだろうけど。
今年の映画ベストテン2016
今年劇場で観た映画は112本。
そちらから選んだ今年のベストテン。
個人的には下半期に好みの映画が多かったので若干偏っているかと思う。
今回も予告編とセットで。
10位 ディストラクション・ベイビーズ
9位 アメリカン・スリープオーバー
8位 私の少女時代 Our Times
7位 淵に立つ
6位 溺れるナイフ
5位 シング・ストリート 未来へのうた
4位 エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
3位 ちはやふる 上の句
2位 無垢の祈り
1位 すれ違いのダイアリーズ
選んだ当人が言うのもなんだが、何か雑食感が目立つ10作品になったな。。
来年も選り好みせず映画観なきゃね。
映画「私の少女時代 Our Times」が良かった話
台湾映画「私の少女時代 Our Times」がむちゃくちゃよかった。*1
話としてはよくある「もどかしくて甘酸っぱい青春系恋愛」ものなのだろうな、と想像できるだろうし実際終盤は一気に舵を切る。回想もあるしそれっぽい音楽も流れる。
だけど、だとしても、そこを全く気にさせてくれず、むしろ涙が流れてきてしまう構成になっていて、そこが凄いなと思っている。
理由は単純。
”人がガラッと変わる瞬間”をうまく使っているからなんだと思う。
別に学生時代に限らず、外見にせよ中身にせよとあるタイミングでガラッと変わることはある。
それは恋愛がきっかけかもしれないし、仕事上の成功・失敗だったり、人間関係や誰かの死によってもたらされるものかもしれない。
急に髪型を替えたり、今まで着ないタイプの服を着だしたりとか、そういう人を見たり聞いたりしたこともあれば、自分にもそういうタイミングあったななんて部分もあるはずだ。
この話の主人公は話が始まった時点では全くイケてない。ビビるほどイケてない。髪はボサボサで、時代遅れのメガネ。私服は寝間着かよと言いたくなる。
でも、話が進むにつれてじょじょに変わって行き、ついには服を選ぶようになっていく。
そして、とあるタイミングで彼女は髪を切って整えて、メガネを着けるのをやめる。
このタイミングが、体感としてこの映画のちょうど真ん中になるのだ。
このタイミングを境に、前半・後半と分けられると言える。
前半・後半で世界がガラッと変わるのだ。
前半は完全にコメディに振っている。
主人公は学校の男たちに全く相手にされず、片思いしている男子と仲のいいクラスのマドンナに嫉妬していないと言いつつ嫉妬する日々。
だけどそこにきゅんきゅん感はなく、冴えない女が学年一の優等生をゲットするために恋愛下手な学校一の不良と手を組むバディもの感もあるコメディー。
その中で不良の秘密も明かされ、徐々に改心していく。
そんな前半で溜まったルサンチマンが爆発するのが後半だ。
話が進むにつれて主人公は優等生よりも(改心した)不良に惹かれていく。
主人公は、好かれたいが一心で兄の彼女の助けを借りて髪型を変えて、メガネを捨てる。一気にあか抜けてスクールカースト上位に殴り込みをかける。*2
少女漫画かと思うくらいのすれ違いと出来上がった青春に、ちょっとだけ泣いてしまった。
そりゃこんな高校時代過ごしたらその後の人生は消化試合になるよなあ、なんて思うので最後の最後の奇跡はボーナスだと感じちゃうが、それはそれでいいというか。
この映画自体、「過去を振り返る」だけの話じゃなくて、大切なことを忘れないでいればどこかで何かいいこと起こるかもよ…くらいのニュアンスで捉えるべきなのかもしれない。
いやあ、でももう1回劇場で観たいな。
最近ずっと「ちはやふる 上の句」について考えている
最近ずっと「ちはやふる 上の句」について考えている。
何を考えているかというと単純で、なんでこんなにぐっときてしまったかということだ。
原作もアニメも読んでないで何も頭に入れず(かるた映画であることすら知らないレベル)で向かって最終的には号泣してしまうっていう、現象そのものに。
正直、どうかと思う場面もそこそこあって。笑いを狙って「うわーやっちゃってるよ」って箇所がない訳じゃないし
前半のとあるシーンの天丼が終盤に出てくるんだけど、明らかに天丼をすることが目的になっていてあまりそこに意味が見いだせなかったりしたりもしてなんだかなあと思ったりはした。*1
ただ、それすら忘れさせてくれる加点がたくさん転がっているのがこの映画。
まず「上の句」のキーマンが広瀬すず演じる千早じゃなくて野村周平演じる太一であるところが凄い効いている。野村周平は「何かを手に入れるために悪事に手を染める」役をやらせたら今日本で一番上手だと思っているんだけど*2
今回はそれをうまく逆手に取っていて。「悪事に手を染めた男のONCE AGAIN」でもあるって構造になっているのが最高だなあと思う。
何かを手に入れるために卑怯な手を使ってでも勝とうとして神に見捨てられた男・太一が、神に正攻法で立ち向かうところがすごく理にかなっている。この手の映画でよくあるのが「偶然勝った(負けた)だけじゃね?」という突っ込みどころだけど、今作は太一のそのロジックを使って誰もが一瞬で理解できる「勝ち」の理由を作れていてそりゃ涙も出てくる訳だと。
そして、広瀬すずも広瀬すずでこのタイプの役をやらせたら今一番イケているのは間違いないのでそりゃ観てて終盤にはぐっと来てしまうのは必然のように感じる。久々に千早と太一と再会するシーンなんてやり過ぎと言えるくらいの演出をしているんだけど全然違和感がない。終盤のスローモーションのくだりも同様。やり過ぎな演出をかき消すくらいの画の魅力を出すことができる女優ってだけでこれからもっと凄いことになっちゃうんじゃないかと思っちゃう。
この2人の影に隠れがちではあるが、他のかるた部メンバーと新の描き方も良い。*3限られた時間で最低限の見せ場を用意し、限られた出番でそれぞれのキャラクターの特性を見事に提示している。新は「下の句」で本当の真骨頂を見せてくれるんだろうとわくわくしている。
そして、最後に映画版用の編集での下の句の予告が挟まるんだが、これがまた素晴らしすぎる。全力疾走する広瀬すずの映像を主軸にダイジェスト的に下の句の予告が差し込まれるという演出なんだけど、あんなの見せられて「下の句」見に行かない奴がいるのかよ!卑怯だろ!と叫びたくなった。なんなんだあれは。最高じゃないか。
なんて思ったりしているわけだ。2部作とかただの引き伸ばしに思えることも少なくないけど、ちはやふるは「上の句」だけで話が成立しているし、「下の句」だけじゃなく何句でも読んでくれ!というくらい2部作で終わっちゃうのか感が凄くて、それはやっぱり良い作品なんだからだろうな。
そして「下の句」を見終えてから、じっくり原作とアニメを見ようと思っているので「ちはやふる」に対するわくわくはしばらく止まらない。