Run and Gun

ひたすら書く。

映画「私の少女時代 Our Times」が良かった話

台湾映画「私の少女時代 Our Times」がむちゃくちゃよかった。*1

 

shinjuku.musashino-k.jp

 

話としてはよくある「もどかしくて甘酸っぱい青春系恋愛」ものなのだろうな、と想像できるだろうし実際終盤は一気に舵を切る。回想もあるしそれっぽい音楽も流れる。

だけど、だとしても、そこを全く気にさせてくれず、むしろ涙が流れてきてしまう構成になっていて、そこが凄いなと思っている。

 

理由は単純。

”人がガラッと変わる瞬間”をうまく使っているからなんだと思う。

別に学生時代に限らず、外見にせよ中身にせよとあるタイミングでガラッと変わることはある。

それは恋愛がきっかけかもしれないし、仕事上の成功・失敗だったり、人間関係や誰かの死によってもたらされるものかもしれない。

急に髪型を替えたり、今まで着ないタイプの服を着だしたりとか、そういう人を見たり聞いたりしたこともあれば、自分にもそういうタイミングあったななんて部分もあるはずだ。

 

この話の主人公は話が始まった時点では全くイケてない。ビビるほどイケてない。髪はボサボサで、時代遅れのメガネ。私服は寝間着かよと言いたくなる。

でも、話が進むにつれてじょじょに変わって行き、ついには服を選ぶようになっていく。

そして、とあるタイミングで彼女は髪を切って整えて、メガネを着けるのをやめる。

 

このタイミングが、体感としてこの映画のちょうど真ん中になるのだ。

このタイミングを境に、前半・後半と分けられると言える。

前半・後半で世界がガラッと変わるのだ。

 

前半は完全にコメディに振っている。

主人公は学校の男たちに全く相手にされず、片思いしている男子と仲のいいクラスのマドンナに嫉妬していないと言いつつ嫉妬する日々。

だけどそこにきゅんきゅん感はなく、冴えない女が学年一の優等生をゲットするために恋愛下手な学校一の不良と手を組むバディもの感もあるコメディー。

その中で不良の秘密も明かされ、徐々に改心していく。

 

そんな前半で溜まったルサンチマンが爆発するのが後半だ。

話が進むにつれて主人公は優等生よりも(改心した)不良に惹かれていく。

主人公は、好かれたいが一心で兄の彼女の助けを借りて髪型を変えて、メガネを捨てる。一気にあか抜けてスクールカースト上位に殴り込みをかける。*2

少女漫画かと思うくらいのすれ違いと出来上がった青春に、ちょっとだけ泣いてしまった。

 

そりゃこんな高校時代過ごしたらその後の人生は消化試合になるよなあ、なんて思うので最後の最後の奇跡はボーナスだと感じちゃうが、それはそれでいいというか。

この映画自体、「過去を振り返る」だけの話じゃなくて、大切なことを忘れないでいればどこかで何かいいこと起こるかもよ…くらいのニュアンスで捉えるべきなのかもしれない。

 

いやあ、でももう1回劇場で観たいな。

*1:のに、なんで上映館数少ないんだ!!

*2:ちなみに、武蔵野館公式の写真は、あか抜けた後。